2005年02月20日

エチュード2


彼女はAと共に、池袋駅西口のエスカレータを上っていた。
地上に出たところで、彼女は携帯電話を取り出しTの番号を探し出し発信した。
ほどなくTが電話に出た。
「そこに交番があるでしょ?」とTが彼女に言うが、
彼女には見つけられなかったらしく、傍らのAにすぐ尋ねた。
「交番ある?」
するとAは、すぐに右手のならびにある交番を見つけて、彼女に指差して教える。
「はい、ありました」と彼女が電話に向かって答えた。
「そうしたら、その方向に1番街って表示がある道があるんだけど」とTの指示。
彼女はある方向を見ていたが、そこがその道だと判断したらしく、
「見えました」と答えた。
「じゃ、その道をまっすぐ行って。途中まで行くから」とTが言ったので、彼女は返事をして電話を切った。
そして、彼女とAは1番街と書かれた道を歩いていった。
すでに時間も夜9時近くなっており、繁華街と思われるそのあたりは、さまざまなひとが行き交っていた。
きらびやかなネオンのあたりでは、呼び込みらしい若い男が立っており、
老若男女のグループが、いくつも彼女たちの脇を通り過ぎて行った。
「池袋ってやっぱり新宿と違いますね」とAが彼女に言う。
「そうねえ、雰囲気が違う感じがするわね」と彼女が答える。
続けて思い出したように、
「このあたりに昔、友達が住んでいて、通ったことがあったけれど、もうどこだか忘れちゃったわ」
「あっ、そうなんですか?わたしは、今の会社の前、池袋の会社だったんですよ」
「あら、そうだったの?」
「だから、このあたりは結構飲みに来ましたよ」
「へえ」
彼女がその話に感心した相槌を打っていると、向こうからTがやってくるのをAが見つけた。
小雨がふっているのに、Tは傘もささずにやってきた。
短い挨拶をしながら、Tがすでに別の友人と入っている店に向かった。
彼女は傘をTに差し掛けようとしている様子だったのだが、Tは彼女よりもずっと背が高く、それが無理だと悟ったらしく、すぐに傘を自分の上に戻していた。
そんな彼女の小さい動作に気付きもせず、雨が降っていることさえも気にせず、Tは目的の店に軽やかに向かっていた。
posted by かてりな at 09:45| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/2038198

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。